10月下旬、大規模改修工事を行っていた世界遺産・厳島神社大鳥居の工事用足場や防御シートが撤去され、3年ぶりにその姿を現したとの報道がありました。海上に浮かぶ赤い鳥居は、残った足場を使って一般公開される見込み、11月末まで真近に見学できるそうです。

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改修中の厳島神社大鳥居(広島県廿日市宮島町)
 二年前はこの状況。足場やネットで何も見えません。

と言うことで、唐突ですが赤色について。

神社の鳥居が赤色(正確には朱色)に塗られるのは赤色自体に魔除けの意味があるため。また、古い寺院の堂塔にも朱や緑に彩色されていますが、これは仏教の受け入れ先である中国の影響。赤(朱)色は権威を象徴する色です。

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伏見稲荷大社(京都市伏見区)
 朱も鮮やかな千本鳥居。
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春日大社二之鳥居(奈良市春日野町)
 世界遺産「古都奈良の文化財」の構成資産のひとつです。
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興福寺中金堂(奈良市登大路町)
 平成30年(2018)に再建されました。
朱色に連子窓の緑も鮮やかです。
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清水寺(京都市東山区)
 仁王門から三重塔。ライトアップで朱が鮮やかに浮かび上がります。
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宇佐神宮(大分県宇佐市)
 全国の八幡宮の総本宮。

この赤色の原料、見た目では判らないですが、正確には2種類。

「辰砂」という鉱物の形で産出される「赤色第2硫化水銀(Hgs)」とベンガラと呼ばれる「酸化第二鉄(FeO₃)」。

土器や木製品等を赤色に塗る風習は縄文時代中期には現れますが、北部九州では弥生時代中期後半以降、木棺や甕棺の内部に赤色顔料を塗布することが確認されています。特に木棺墓では、棺をベンガラで塗り、被葬者の頭部や胸部には水銀朱を塗ることが分かっており、25年前の木棺墓調査では出土した赤色顔料の分析によって水銀朱を検出、被葬者の頭部の位置が判明したことがありました。

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森園遺跡(福岡県糸島市)木棺墓
 25年前に調査したものです。
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木棺の痕跡
 薄っすらと朱が見えます。
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朱の分布状況
 5か所で朱を採取。科学分析の結果、図面の下が被葬者の頭位と判りました。

 こうした赤色へのこだわりは古墳時代でも。竪穴式石室に埋葬された木棺にびっしりと塗られた朱には魔除け、権力の象徴、防腐剤の効果もあるのかな。

そう言えば、最近、調査した石棺仏にも赤色顔料が・・・。科学分析したら、何かわかるかなぁ?

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福円寺(姫路市)の石棺仏
 組合せ式石棺の底。赤色顔料が塗られていました。

人は置かれた環境に影響されやすいと言うことわざ、に交わればくなる」

これは中国の故事「近墨必緇 近朱必赤」から来ているもの。


姫路に来て1年、たくさんの方に支えられて、私も良い色に染まっているかな。